プリズム 〜3〜
「敦盛、寒くはないかい」
「ああ、私は大丈夫だ」
「つれないね、お前は。こんな時は、少しくらい『寒い』と言ってh…クション」
「ヒノエ……、お前の方こそ、ジャケットをちゃんと着た方が良い。
そのように肩に羽織っていても、暖は得られないのではないだろうか」
「これはファッションだからね、譲れな…クション」
「フッ」
「何だい、その意味深な笑いは」
「かわいいくしゃみをするのだな」
「か、かわいい……」
「無理に格好などつけずとも、ヒノエはヒノエだ。風邪を引かれる方が私は心配だ」
「嬉しいことを言ってくれるね。これは是が非にも風邪を引いて、お前に看病してもらいたいものだ」
「ヒノエ、そのような事を」
そう言って敦盛はヒノエの羽織っていたジャケットを奪うように取ると、
自分の着ていたコートをヒノエに着せた。
「少しキツイかも知れぬが」
「敦盛…」
「私はこのジャケットを着よう。まったく、このように薄手のジャケットで外出など」
敦盛の行動に面食らってフリーズしていたヒノエが我に返って
「そんなことをしなくても…」
しかし、次の敦盛の行動が再びヒノエに言葉を失わせた。
「さ、こうして」
そういうと敦盛はヒノエと手をつなぎ、
敦盛の、つまり今はヒノエが着ているコートのポケットに2人の手を差し入れたのだった。
「あ、敦盛…」
「暖かいだろうか?」
満足そうな笑みを浮かべヒノエを見つめる敦盛に、どこか頬が熱くなるのを感じるヒノエだった。
「こうして相手の手をつなぎ、暖めることで信頼と親切を示すのだそうだ」
「誰がそんな……」
『嘘を吹き込んだ』と言おうとしたが、辛うじてヒノエの本能がその言葉を押しとどめた。
「こちらの世界ではそうするのだそうだ。神子が先日そう言って教えてくれた」
「へぇ……、望美が…ね(神子姫、ナイス!)」
そう思うと、漸く平静さをヒノエは取り戻した。
「お前のコート、コートに残るお前の肌の香、そして右手にはお前の左手」
「ああ、そのコートはやはり嫌だったのだろうか」
「とんでもない。嫌なわけないじゃん。
それどころか今、オレはお前に身体中抱きしめられているようなものだからね。
歓喜の極みってところかな」
「そのような…。ただ……すまない」
「何がだい?」
「私の手は……その…、ヒノエに暖をなど……
やはり私は穢れている……、このような事をする資格など…」
と慌ててつないだ手を離そうとする敦盛に
「手をつないで温めることが信頼と親切を示すのなら、それは何もお前だけじゃない。
オレだってお前にそれを示していいわけじゃん。
なら、つかんだこの手を離すつもりなど、あるわけ無いだろ、絶対に」
そう言って、ウインクをするヒノエであった。
11/07/03 UP